love is love | 旅の手記 | Kota Oneness Artist

love is love

 

「やぁ、俺はジェイミー。へへへ。調子はどう?」

 

日本では見ない大きなチュッパチャップスを

舐めながら笑顔で現れた彼は、

細身に白い肌、茶髪でロン毛、

身長は欧米男性にしては低かった。

 

声はとても穏やかなのに、

どこか無邪気な感じがして、

出会う人々は皆んな昔からの

友達のように接する優しい人だった。

 

今日から数日間、彼の家に滞在させて貰う。

旅人が無料で地元の家に泊まることが出来る

カウチサーフィンというサービスを

利用した出会いで、

僕は旅の間はよく使っていた。

 

彼は熱心なクリスチャンである一方で、

スピリチュアルな考えが大好きだった。

僕を迎え入れてくれたのも

何か良い前兆が起こる啓示があったから

とのことだった。

 

そういう考えは僕も好きだった

特に旅をしていると何か起きる前には

前兆のようなものが確かにあると

感覚的に分かり始めていた。

 

そして僕自身も何か大事なことが

この場所で学べそうな予感がしていた。

そこはカナダの元首都である

キングストンという街だった。

アメリカと国境が近いという

軍事的な立地的な事情から、

首都は他の都市であるオタワへ移された。

 

その歴史の名残から、

現在は当時の要塞や大砲などが観光地となり

多くの観光客はそこを訪れていた。

 

でも長旅に疲れた僕は、もう観光地へ行く

氣力はすっかりなかった。ガス欠だった。

ただただボーッとしたいことが望みだった。

 

旅を長く続けると、

非日常だった旅生活自体が

日常へと変わってゆく。

 

初めていく場所であっても、

新鮮さが無くなってしまう感覚があった。

 

ジェイミーにそのことを伝えると

「まぁ、旅は疲れるよな。無理して出掛ける必要も無いと思うけど。。ああ、自然の中に行けば良いんじゃないか。結局、自然だよ」と言いながら、

地元の人でもあまり行かない森の場所を教えてくれた。

 

昼下がりに僕は1人でその森の中を歩いた。

彷徨ったという言い方が正しいかもしれない。

 

人は誰もいない。

ただ自然と自分がいるだけ。

そのことが凄く心を癒してくれたのが分かった。

 

本当に誰もいないので、

世界で人間は自分だけになったような感じもした。

夕方、無事に彼の家に帰ると、

ちょうど今から友達の所へ行くから

一緒に行ってみるか?と誘ってくれた

 

着いて行ってみると、

20代の男達が5人くらい集まっていた。

皆んな移民してきた外国人らしく

英語は完璧ではなかった。

 

カナダという英語圏の国に今は居るのに、

英語ではない言語も飛び交う空間にいて、

初めて会う人々に囲まれ、

自分が今どこにいるか分からなくなった。

 

そもそも自分とは何なのかとさえ思った。

このような感覚に陥ることは

長い旅の中で、何度も経験していた。

ある時、彼らの中の1人が恋人と上手く

いっていないという話をしていた。

 

その時、ジェイミーは背筋を正して

相手の目を真っ直ぐ見て喋っていた言葉を

数年経った今でもふと思い出す。

 

「よく勘違いされるけれど、

愛って言うのは、、

好きが強くなったものじゃない。

 

愛っていうものは、、愛なんだよ。

 

LOVE is love! you know, it’s like…hmm」

 

うまく言葉では説明が難しいという表情と

雰囲気を醸し出しながら続けてこう言った。

 

「こう広〜くて、宇宙的で、包括的で、、」

 

両手をわーっと左右へ広げたと思ったら、

いやちょっと待ってという仕草をして、

沈黙しながら少しの間考えていた。

 

哲学的な難しいトピックでもあったし、

彼以外の皆んなが英語が母国語ではない

ことで慎重に言葉選びをしていた

のではないかと思う。

 

そして、考えた末、大きく息を吸って、

両手を内側から外側へワーーっと、

巨大な風船を抱えるように

大きく広げながら全力で言った。

 

「愛って言うのは、愛なんだよ。」

 

さっきと同じこと言っていたが、

大きな身振り手振りで繰り返し言った。

 

 

「愛って言うのは、愛なんだよ!」

 

 

「love is love」

「愛って言うのは、、愛なんだよ。」

 

 

「love is love」

 

 

「愛って言うのは、、愛なんだよ。」

 

 

何度も何度も熱心に繰り返す言葉、

身振り手振り、真剣な表情、

真っ直ぐな眼差し、

 

 

「愛って言うのは、愛なんだよ。」

 

 

ただ同じ言葉を繰り返しているだけなのに、

不思議と「愛」という意味を

初めて理解した氣がして感動してしまった。

 

 

 

それは確かに好きが強くなったものではなく、

愛とは、愛なんだと心で感じた。

 

ふわーっとした温かい暖色系の光が

自分の内面から溢れ出るのを感じた。

 

それは誰かから優しくされた時や、

自分が誰かに優しくした時に感じる

ほわほわとする心地良い感覚と同じだった。

 

これまでの人生で何度も味わったあの感覚。

それが愛だったのだと初めて自覚した。

この世界に居る人間は僕だけじゃない。

 

今、自分はここにいる。

 

自分は自分だ。

 

愛って言うのは、愛なんだ。

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