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闇の日々

闇の日々

いつもどこかで雨が降る街カナダのバンクーバー。その一角に異様な雰囲氣を出しているスラム通りがある。ネズミが走り回り、ゴミが散らばる道で大勢のヘロイン中毒者達が注射針を握ったままボロ布のように寝転がっている。氷点下を遥かに超えて全てを凍らせてしまうカナダの冬では路上生活はとても出来ない。しかしこのバンクーバーと言う都市は冬になっても0度前後である為、カナダ中のホームレス達が行き場を求めて流れ着く。

一度ヘロインを体内に打ち込めば、数時間は現実の不安も孤独も全てを忘れる。意識は飛んでいき、直ぐに人が人でなくなる。まるで人の形をした物体とも言える。そんな物体達が敷き詰まって並んでいるこの道では毎晩、薬物過剰摂取で誰かが死んでいく。救急車のサイレンが走り回る音がその合図だ。

ゴミ箱を漁って食べる物や資金になる物を探す。雨風を凌げて眠れるシェルターとなる場所を探す。生きのびる為の生活に追われ、そして注射をまた打ちたいという欲求に追われ、自分自身を探すことはままならない。

対照的にいくつか通りを跨いだ所を見上げれば高級マンションが高々と立ち並びキラキラとした明かりを放っている。

ある雨の日、大柄な中年のホームレスの男が荒ぶりながら怒りの言葉は吐き出した。

「誰が好きでこんなクソったれな状況になりたいのか?俺の家族はいつもバラバラだった。父も母も誰も俺を愛してはくれなかった。もう全てが嫌で学校も行かないで充てもなくとにかく家を飛び出した。。それから何十年もこんなにも辛くて寒い日々だ。」

ドン、トン、ドン、トン、

ネイティブアメリカンの聖なる歌を歌う人達が小さな太鼓を叩きながらそっとやってきた。音色が周囲を取り巻くとさっきまで荒ぶっていた大柄の男は閉口し静かになった。まるで暗闇に照らされたランタンのようにその歌の周りだけは暖かい柔らかい光に包まれているようである。大柄の男は詰まっていた何かが取れたように赤子が泣きじゃくるように急に大粒の涙を勢い良く落とし始めた。

物事にはいつだって因果があるように、人にはそれぞれに事情というものがある。正しい愛と教育が満ちた家庭が無ければ人は難儀な道を歩んでいく。とても繊細でいて残酷な生き物だ。この街に落ちては流れる雨と涙は何かを洗い流しているかのようで冷たいようで温かくもある。一体何処に流れ着こうと言うのか。雨も涙も人間も。